徹底解説!個室型「木製ワークブース」



web会議用など増え続ける需要「ワークブース」
プラバシーの確保、情報漏洩防止を目的とした活用が拡大中

新型コロナウイルスの感染拡大にともなって、ビジネスシーンの大きな変革となったのは、従来のフェイスtoフェイスでの打合せや商談から、インターネットを通じたオンラインミーティングの普及ではないでしょうか。

オンラインミーティングはネット環境さえあれば比較的手軽に行うことができる一方で、オープンな環境下においては周囲に会話内容が筒抜けになることで、プライバシーや情報が漏洩しやすく、別途個室が必要になることは対面でのミーティングと変わりないとの意見を耳にします。そのためか、ある企業様ではweb会議のための「会議室のスケジュール予約が1分刻みの奪い合いだよ」との声をお聞きしました。

増え続けるオンラインミーティングに対し、今急速に需要を伸ばしているのがボックスタイプの個室ブースです。最近では鉄道の駅などでも有料時間貸しの個室ブースを見かけることが増えてきましたが、外部からの環境音を遮断できるとともに、外部へ会話内容が漏れ伝わることを防ぐツールとして、省スペースで効果的な運用が可能です。

木製?金属製?ボックス素材はどれが良い?

企業様向けにミーティングブースとして販売されている個室ブースは、「天井付き」「箱型のボックスタイプ」が一般的ですが、その素材は大別すると3種類に分けられます。
それぞれに特性が大きく異なりますので「どの素材(の商品)を選べばよいか」が商品選定で重要です。

・合板パネルを組み合わせた木製ブース
・金属を用いたパネルを組み合わせた金属製ブース ※FRP樹脂を主体とした製品もここに含めます。
・プラスチック、段ボール等の軽量素材を用いたその他材製ブース

あくまで当社の見解ですが、各製品の特色を一覧にまとめました。


低コストだけど剛性低く遮音性に期待できないプラ・紙ブース




3種類の中で圧倒的に低コストなのが、プラスチック、段ボール、ペーパー等の軽量素材製のワークブースです。

製品価格としてもロープライスですが、何より外部委託の施工費が不要なのは大きなコストメリットです。
軽量ですのでレイアウトの変更や、不要になった際に畳んで収納できるといったフレキシブルな活用ができるのも利点です。また小ロット生産のできる紙や段ボール素材であれば、サイズなどのカスタマイズ性も可能です。

弱点としては基本的には天井のないオープンな囲いの商品にならざるを得ないため防音性・遮音性は期待できません。
なぜ天井をつけないか理由は大きく二つあります。一つ目は天井をつけてしまうことで後述する消防法上の規制対象となる可能性があるため。二つ目は天井に必要な照明を取り付けるだけの素材剛性がないためです。
商品によっては内側に吸音材を貼って、反響音を減らす工夫がされた商品もありますが、天井が吹き抜けになっている以上劇的な効果は期待できません。

また素材としても雨風への対候性は低く、長期間の野外使用には適しませんし、剛性が低いので内壁に重量物(鏡や棚など)を取り付けることも困難です。

使用用途としては、周囲の視線を遮るパーテーション的な目的でと割り切った目的で検討されると良いでしょう。

対候性◎で頑丈、スタイリッシュ!でもコストは高め?金属製ブース




野外・室内を問わず使用できる対候性を生かし、シェアを伸ばしているのが金属製ワークブースです。鉄・剛板・アルミ製などから金属ではありませんが衝撃強度の高いFRP樹脂を使用したものまで素材もさまざまです。

金属製ブースは何といっても見た目にスタイリッシュ。オフィスにあるだけでハイセンスな企業イメージを与えてくれるようなインパクトがあります。
素材の剛性が高いため、大き目のガラス壁やガラス引き戸と組み合わせることも可能ですので、ブース内外の採光も確保できサイズの大きな商品ですが室内の圧迫感も軽減できます。

もうひとつの特性として気密性が高く、遮音性に優れてています。扉を閉めたとたん、周囲のざわつきがシャットアウトされる感覚は金属製ブースならでは。仕事に会話に集中できる環境が生まれます。

デメリットはほぼ無いと言える金属製ブースですが、あえて難点といえるのは、導入時のコストです。
製品代金と設置時の施工費をトータルすると概ね1台100万円を超える金額となり、製品によってはほぼ完成品状態での納品だったり、パーツ分割の場合でも重量が重くなるため現場によってはクレーンでのつり上げが必要だったりと、見積金額を見て商品を再検討するケースも多いようです。
また製品の多くは金型鋳造のため、サイズ変更などのカスタマイズ性に欠けることがある点もデメリットと言えるかも知れません。

高い汎用性とリーズナブルさ!野外には弱い?木製ブース




現時点でワークブースとして最も導入されているのが、木製ブースでしょう。サイズ加工がしやすい木製の特性を生かし、国内工場で製造されるような製品であればサイズを変更した特注オーダーが可能です。

また内部の芯材箇所にはビス固定によって「ハンガー」や「ミラー」、「照明」「AVモニター」「無線LAN機器」などの取り付け、カスタマイズによってがさまざまな用途での使用が可能な汎用性の高さが最大の特長と言えます。汎用性の一例をあげると商業施設内の「授乳室」「個室型セルフネイルボックス」「更衣室」といった用途に使用されている事例があります。

デザイン的にも金属製ブースのクールな無機質感とは異なる、身近で温かみのある印象を与えてくれるのが木製ブースの特色です。
素材としては杉材・パイン材など天然木材を使用した商品もありますが、工場で加工した合板パネルを使用したものが主流です。合板の場合、表面に単色カラーや木目などをプリントしたシートやメラミン樹脂を貼り付けて意匠をほどこしますので、いくつかのカラー・木目の中から選べることが多く、メーカーによっては特注でオリジナルカラーでの製造を受けてくれる場合もあります。

一方で木製ブースの弱点と言えるのは対候性です。直接雨風にさらされないロケーションでも、日本の多湿で季節の温度変化が大きい野外環境下では木製品の反りや腐食といった製品劣化のリスクが高く適していません。
また気密性も、ほんのわずかですが合板パネル間やドア下にスキマが生じる場合があり、パーフェクトとはいかない場合があります。そのため遮音性は金属ブースと比較して落ちる印象ですが、レベルが違うと言えるほどの大きな差ではありません。遮音効果としては明らかに感じられるものと言えます。

製品の多くは現場でパーツ(パネル)を組み合わせて完成させますので、搬入・組立時間は1台当たり1.5~2時間程度です。トータルコスト的には同サイズの金属製ブースの価格よりも2割ほど安い商品が多いようです。

このようにブース素材によってそれぞれ特色が異なりますが、当社では様々な用途・ロケーションに対応できコストパフォーマンスの高い木製ワークブースを推奨し販売しております。

フルクローズ個室ブースに避けて通れない「消防法」への対応問題





企業様が個室ブースの導入を検討されて色々調べていくなかで、必ず直面するのが「消防法」でしょう。
上記で述べた金属製・木製といった素材に関わらず、個室ブースを便宜上3つのタイプに分けると

・天井がまったくない「オープンタイプ」 →消防法の適用外
・天井はあるが、格子やスリット状で密閉されていない「セミクローズタイプ」 →消防法の適用外
・天井があり密閉されれいる「フルクローズタイプ」→消防法が適用される

密閉されたフルクローズタイプは遮音性能は高いですが、消防法の適用を受けることになります。
火災が発生したときの被害を最小にするため、スプリンクラーの設置が義務付けられた場所に設置する場合、フルクローズでは内部への散水ができないためです。厳格に消防法を適用すれば、ブースも個室と見なされスプリンクラーや火災放送を受信できるスピーカーなどを設置する義務が生じ、設備コストが高額となってしまい現実的ではありません。

しかしながら「可動式個室ブース(キャスターなどで動かせるもの)」については特例措置として、後述する要件を満たせばスプリンクラーやスピーカーの設置が免除されるようになりました。(消 防 予 第 622 号 - 総務省消防庁)
要件を簡単にまとめると、以下の通りです。

・可動式個室ブースの床面積が3㎡以下であること
・可動式個室ブースの天井および壁が不燃材料仕上げであること
・可動式個室ブースの外からブース内を目視で確認でること
・可動式個室ブース内における音圧が65デシベル以上あること
・可動式個室ブース内(主に天井)に下方放出型自動消火装置(消火器)を設置し、維持点検を行っていること

この要件を満たした上で、所轄の消防署に届け出・申請書を提出する必要があります。

※個室ブース自体がかなり新しい商品であることから、消防法上の申請手続きについては設置場所を管轄する所轄消防署によって見解が分かれることが多くあります。下記に記載するのは標準的な申請事例ですので、必ず設置者様で所轄消防署への確認をお願い致します。


【1】防火対象物工事等計画届出書


政令別表第1の各項に揚げる防火対象物において、建築基準法の法規に基づく確認の申請や計画の通知を必要としない防火対象物の建築、修繕、模様替え、用途変更に係る工事等をこれから行おうとする場合、提出が必要です。難しい内容ですが、新築や改装工事で個室ブースと一緒に新たに「天井までスキマのないパーテーション」(防火対象物)などを設置する際に届け出が必要です。既存のオフィスに単に個室ブースを置く、といったような場合であれば必要ありません。

【2】防火対象物使用開始届出書


防火対象物である個室ブースを使用します、という趣旨の届出書ですので必ず提出が必要です。用意するものは

・付近見取図(建物の所在地付近の地図 住宅地図でなくともgoogleマップのプリントでも問題ありません)
・建物配置図(敷地内に建屋が分散されている場合)
・各階平面図(消火器や避難誘導灯、個室ブースの設置位置を明示します。使用箇所の該当区画の詳細平面図だけでOKな場合もあります)
・建物立面図 (不要と言われる場合も多いです)
・内装仕上表(設置場所の内装仕上げです)
・その他、火災予防上必要となる図書 

所轄消防署によって、上記全ての書類が必要な場合と不要な場合があります。必ず事前に確認をお願いします。

【3】基準の特例等適用申請書


先に述べた要件を満たしているので特例措置としてスプリンクラーや防災放送スピーカー等の設置を免除してください、という趣旨の申請書です。ブースの製造メーカー・販売店から入手してください。届け出書ではなく申請書ですので証明が不十分とされた場合、却下されることになりかねません。各製造メーカーはその点を周知しており証明書の準備も問題ないと思いますが、特注家具として初めて製造するようなメーカーの場合、こうした認識がない場合があります。特に気密性が高すぎて、65デシベルを下回ることもありえますのでご注意ください。

・不燃材認定書(壁・天井それぞれ必要です)
・音圧レベル測定証明書(ブースを閉め切った状態で、ブースの外で火災放送の基準である90デシベルの音を鳴らします。その状態の内部の音圧測定し65デシベル以上あることの証明書)
・自動消火装置の認定書
・設置製品の3面図(個室ブースの床面積、可動式であること、内部を目視できる窓部を備えている証明のためです)

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